世界文庫アカデミー
 

Special issue 07

対談:木村まさし( オールユアーズ )× 古賀鈴鳴( 世界文庫アカデミー ) 前編



これからの「 新しいはたらき方 」の学校、「 世界文庫アカデミー 」( 以下、セカアカ )。
その講師のひとりでもある、木村まさし氏。
クラウドファンディングの、ファッション部門で、国内第一位の支援額を調達した、ブランド「 オールユアーズ 」の代表。
第2期のセカアカでは、クラウドファンディングに挑戦する生徒が多かったのもあり、今の「 働き方 」の、時代感覚を現すようなお話が、木村さんとはできるのではないかと思いました。

( 写真 左 : 木村まさし、右 : 古賀鈴鳴 )
( 写真 左 : 木村まさし、右 : 古賀鈴鳴 )

ある日の夜。「 世界文庫アカデミー 」第2期の授業後に、木村さんと、京都の「 世界文庫 」で、和やかに、しかし熱く、お話が始まりました。

・・・・・・・・・・・


インターネット時代の働き方改革 !

 
 
インターネット時代の働き方改革 !  
 

未来への手かがりができる場所 !


古賀 きょうは、「 インターネット時代の働き方改革 」というテーマを軸に、お話を始めたくて。
木村さんのやられている洋服のブランドは「 インターネット時代のワークウェア 」を掲げているじゃないですか?
うちの「 世界文庫アカデミー 」も「 世界文庫 」も、あんまり表向きはそうは見えないかもしれないのですが、実は、かなり「 インターネット時代の良さを享受して成立した場所 」とも、思っています。それで、個人、または「 オールユアーズ 」や、うちみたいに、お客さまと顔の見える組織で、なにか新しいことをやることが、今の時代にフィットしていてすごくいいのではないか、と。
そんな風なお話ができたらいいなと思っています。

木村 はい。よろしくお願いします。

古賀 「 世界文庫アカデミー( 以下、セカアカ ) 」の人たち、特に、次期に募集する第3期生へのメッセージにもなればいいなと思っています。色々なお話をしたいのですが、まずは、セカアカ第1期生・2期生と、教えにきていただいてきて、受けた印象ってありますか?

木村 モチベーションは人によって、各人でも、全然違うじゃないですか?
「 セカアカは、それぞれの自分のやりたいことを実現しよう ! 」っていう学校なので。なにかひとつの成果物をみんなで作るっていうことじゃなくて、個人がどうやりたいことを実現するのか? だと思うんですよね。
その中で、やりたいことが決まっている人もいれば、まだやりたいことが見つからないけども、「 ここに入ったら、やりたいことがなにか始まるんじゃないか? 」って人もいたりして。
色々なレイヤーの人たちが混在してると思うんですけど。「 まだやりたいことが特にないんです 」っていう人が、だめなわけじゃ全然ないところだなって感じて。それがすごくいいな、って。

古賀 そうですね。それは全然。
「 まだやりたいことがみつかってないんです 」っていう人でも、先生も生徒も、みんな受け入れてくれますからね。この場の環境がそもそも、温かいというか。

木村 1期生・2期生でどう違ったかっていうのは、そこまでないんですけど。みんなが認めあってる空気みたいなのは、どちらにもすごく感じましたね。

古賀 はい。そもそも、色々な都道府県から通って来ていて、年齢もやりたいことも、みんなバラバラだし。相当、多様な人たちが集まっているんですけども、でも雰囲気はどこか似てるとこあるんですよね。不思議と。

木村 そうそう。「 セカアカ感 」って、確かにありますね。今日はちょうど、セカアカ2期の生徒さんたち大勢で主催してるイヴェントがある日だったから、古賀校長と授業の合間にのぞきに行ったら、やりたいことがある人はそうしているし、まだ見つかっていないなって人も、人を手伝うことによって居場所を見つけてるというか。
お手伝いすることによって、その人の原体験にも触れられるし・・・そういう意味でも、やりたいことのある人の側にいられる環境っていうのは、僕は、セカアカという学校の、結構な価値だなと思っていて。
全員が全員、明確にやりたいことがある社会って、僕は、実はあんまり良くないと思っていて。たぶん、主張し合って争い合いになるんですよね。そうじゃなく、「 まぁまぁまぁ 」って、間に入る人もいた方がいいし。やりたいことがないから「 この人の言っていることはおもしろいし手伝いたいな 」っていう存在があるからこそ、実現もできるわけだし。

古賀 そうなんですよね。そういう間に入る人も、セカアカ第1期も、第2期も、結構重要だったなあと思っていて。そういう人って「 今のところやりたいことないので・・・ 」と、ちょっと自信なさげだったりもするんですけど。いや、いてもらわないと困るっていうか。本当にみんながこれやりたい、あれやりたいって、全員が花火ばっかり打ち上げていたら。確かに、ずっとうまくいくという、継続に関しては難しくなるかもですよね。

未来への手かがりができる場所 !  
 
木村 自分がやりたいことで頑張るっていうのも大事だけれど、やっぱり他人を手伝うことって大事だし。で、僕は、よくそれを「 打席に立とう ! 」って言ってるんですけど。打席に立ってバットを振らなきゃいけない。自分で機会を作って自分を磨かなきゃいけないし、世の中に発信していかなきゃいけないと。でも、手伝うということが打席に立っていないということではないし。手伝うっていうことは打席に立っていますよね。その人にしたら。

古賀 じゅうぶん、立ってます。

木村 手伝ってることで、なにかノウハウが学べたり。

古賀 だからセカアカは、約1年間のプログラムなんですけど。重要なのは、やっぱり1年の間も相当色々な手助けしたりとか、みんなで協力し合って、いろんなプロジェクト、イヴェントを授業の合間にやりますけども。卒業した後に、どうしていくかっていうことが、すごく大事だと思ってやってますね。
そのヴィジョンを持つことができれば、活動のコツがつかめれば、卒業後も自分で切り開いていけるから。
その「 未来への手かがり 」をあげられたらと思うんですよね。




全員に役割がある舞台みたいなもの  
 

全員に役割がある舞台みたいなもの


木村 なにかやりたいことが明確にあるっていうことだけが重要ではなく、「 変わりたい 」って気持ちを持っていることが大事で。

古賀 ほんとですよね。次の第3期生もそういう人たちが集まってくれたらいいし、セカアカが、今、全国の方たちにも羨ましがられる位にすごく良いコミュニティになっているのは。やっぱり、根本に「 今よりもっと良くなりたいな 」っていう気持ちの人たちが、ちゃんと集まってきているのが理由としてあると思います。

木村 控えめな性質の人だっているじゃないですか? でも最後の方の時期になると、なにかイヴェントやろう ! ってなるとみんなもう自然に動いているし手伝ってるし、今のところ明確にやりたいことがないって人でも全然オッケーですよね?

古賀 もちろん。
よく言うんですけれど、全員が全員、主役じゃなくてもいいわけじゃないですか? 舞台も、主役ばかりじゃ成り立たないから。だから脇役とか、美術の人とか、宣伝、チケットもぎりの人も、全員が必要だし。その時は、舞台に立つ役じゃなかったとしても、色々なポジションを見つけて楽しんでもらえたらいいな、と。

木村 自分の役割を見つけられる場所だと思うんですよね、セカアカは。与えられていない場所で自分を見つけるっていうのも、実は、すごいチャレンジだと思うんです。
企画や、アイデアを出すのが得意じゃなくて、仮におもしろいものが作れないって思って悩んでいても、運営がめちゃめちゃ得意な人もいたり。もっと言うと、その運営の前準備が得意な人もいるし。その辺を自分で気付くっていうのは、すごくいい機会ですよね。

古賀 別に、「 今すぐこれをやりたい 」っていうのがなくても、やたらと愛想がいいとか、それはそれだけでもうすごく。

木村 最高じゃないですか。

古賀 重要というか。おそらくすでに役に立ってたりしますよね、そういう人がいると。場が和んだりとか、営業してもらうとか、交渉事とかね。
そういう「 みんなで協力する。それぞれが応援しあって夢を叶える 」っていうテーマの元に、セカアカは、そもそも集まっているから。

全員に役割がある舞台みたいなもの  
 
木村 僕なんかでいったら、実際、「 オールユアーズ 」っていう会社で、実務とかほとんどやらせてもらえないし・・・。

古賀 ん。どういう意味ですか?

木村 いや、ミスするからなんですよ。笑。 本当に何もやらせてもらえないんですよね。ミスしちゃうから。

古賀 でもやっぱり。とはいえ、木村さんには「 ライフスペック伝導師 」っていう、大事な役割があるから、それをまっとうすればいいんだろうし。そこに特化して。みんなに、「 オールユアーズ 」の良さを広める。

木村 そうですそうです。
インターネット的な働き方という話でいうと、僕は逆に属人的なのも魅力的だなって。「 あいつがいたらここって上手くいったのになあ 」とか。世の中の大きな会社とか、いわゆる昔の体質の今までの会社って、システムで、誰が入ってきても大丈夫なようにしたがるんですよね。

古賀 そうですよね。誰でも、代替可能というか。

木村 そういう仕組みで。だから僕が以前にサラリーマンやっている時に、一番思っていたのは、「 なんか今日、僕が休んでも、会社に全く影響ないよな  」っていう。

古賀 それはでも、ある程度人数のいる会社だと、もうそういう仕組みにしてるんでしょうね。

木村 普通に社会に出ると、たぶん、そういう経験する人が多いと思うんですよね。だけど、セカアカだと小さく始められるし。別にいきなり人生賭けるわけじゃなくてもいいし。ちょっとずつ始めてみて、人のおもしろいことも手伝えたりしながらやるので、自分の良さがもっと出せると思うし。で、その時に、「 あ、あいついてくれてよかったな 」とか。「 あいつにも手伝ってほしかったな 」って思われるような感じ・・・それがある環境ってすごく良いと思うんですよね。

古賀 もうその人が大事というか。その人の存在自体にフォーカスされているってことですね。

木村 そうそう。その人と仕事したいって思われるのが一番大事じゃないですか。

古賀 そうですね。木村さんにお願いしたいとか、古賀さんに来てほしい、って言われるとやっぱり嬉しいですもんね。代わりがいない、というのは。

木村 そんな感じのことが、セカアカでは体験できるんじゃないかなと。授業とか、今日のイヴェントのみんなの感じとかを見ていると。

古賀 今日もたまたまイヴェントの日だったけど、やっぱりなんかみんなイキイキした顔して、「 私たちの居場所です感 」ありましたもんね。笑。いや本当に。生徒たちの家に、ようこそ ! って、招かれてるみたいだったな。

木村 今日は、授業だけでなくイヴェントでも、セカアカのみんなのいい表情見れて、おもしろかったです。




もしかして自分もひとりでもやれるんじゃないか?  
 

もしかして自分もひとりでもやれるんじゃないか?

 
 
古賀 セカアカのコンセプト、ステートメントが、web ページにも書いてあるんですけど。頼んでいる先生たちが、僕もそうなんですけど、「 ひとりでなにか面白い活動している人 」。もしくは、「 少人数の規模の組織・グループでなにかしている人 」なんですよ。
生徒さんの目線からしたら、何千人も率いている「 カリスマ社長やってます 」みたいな方が先生で来ても、「 わたしとは世界観が違いすぎる・・・ 」みたいな。

木村 ・・・たぶん、大きな溝を感じますよね。

古賀 素晴らしい格言など、参考になることは言ってくださるのでしょうけど、違う人生すぎる・・・っていう意味で意識に断絶があるんじゃないかなと思っていて。でも、校長である自分なんかも、仕事はほとんどひとりでやっていますし、木村さんのところも。

木村 数人の会社ですね。

古賀 だったらなんか、「 もしかして自分もひとりでもやれるんじゃないか? 」って言う風にも思ってほしいなと思って。そういう先生たちにお願いしているんですけども。なので、今の時代は、「 個人で発信が可能である 」。ひとりのつぶやきも、民主化されている、それがインターネット的かな、という風に、僕はひとつ思っているとこがあって。SNS しかりで。

木村 そう。SNSってタダなんですよね。広告しようと思ったらいくらかける、とかってあるけど、基本的には無料で発信できるわけで。それって、「 組織が強い時代から個人が強い時代 」への流れの強烈なフックになってる。やっぱり正直に正しいこと言っている人が支持されるし。
今、SNS ってアルゴリズム的に組織が言っていることが伝わりにくくなっているらしいんですよ。Facebook とかもカンパニーのアカウントより、個人のアカウントの方が強くなってたりとか。

古賀 確かに。もうあんまりタイムラインに、会社・カンパニーの投稿とか流れてこないですもんね。

木村 それ、やっぱりすごく重要だと思うんですよ。個人の時代において。さっき言ったみたいに、組織がもう一度属人化していくっていうか・・・この人がいないと成り立たないとか。なんか、ちょっと、繋がりが、バンドっぽくなってきていますよね。

古賀 それ、すごくわかりやすい例えですね。そして、そういう組織なり、グループみたいなもの・・・バンドっぽいもの? 村とか集落的と言っていいかもですが。そういうもの、そういうコミュニティの在り方に、ここ数年、人って反応していますよね。やっぱり大企業は大企業の流れがあるんでしょうけど、それとは違うなにか・・・今までなかった流れ。それってやっぱり、SNSにも顕著ですよね。
この間も「 Twitterとはなにか? 」の討論みたいの。僕と木村さんと、あと起業家の人などの、計4人で、Twitter上で、急に始まって、ダダダダーッと、1時間くらい濃厚にやりとりして、急に終わった・・・あれはあれでなんか音楽っぽいというか。セッションぽかった。

木村 僕は、Twitterって一番メディアとしては好きなんですけど。なんか喫茶店っぽくもあるんですよ。じゃあ古賀さんと会いましょうって行って座って話していたら、「 その話面白そうですね 」って隣の人が入ってくるみたいな感じじゃないですか? だったりとか、「 ちょっとハンカチ落ちましたよ 」って言って会話が始まるみたいな。

古賀 「 よかったらこの席座ります? 」 みたいな。

木村 そうそうそう。

古賀 そういう気楽さっていうか、入りやすさはありますね。

木村 そう。だからパーソナルゾーンはあるんだけれども、喫茶店とかカフェみたいに、秘密のことを話していても、実際は隣の人にちょっと聞こえている、見えているみたいな。なんかああいう場で、横に繋がれる。

古賀 今までのように、関係を煮込んでいく、手間がなくなってきている、というか。

木村 そうですよね。古賀さんが以前おっしゃってた、活動を始められた最初の頃に、イラストレーターになろうと思って作品見てもらおうと思ったら、っていう話があるじゃないですか?

古賀 ああ、もう、大変でしたね。90年代初頭の話。相手を調べて、電話して、アポとろうとしても、忙しいからと断られて。数ヵ月後また電話してとか。それが、SNSだと一瞬で。まあ、タイミングはあるでしょうけど、繋がろうと思えば一瞬。

木村 自分の作品を、誰の望みもなくても、世の中に出せる場所があるというのもすごいですよね。今までって、描いたものって世の中に出せなかったわけじゃないですか?

古賀 ですし、別に誰も見ていないなっていうか、そういう感じが漂っていましたよね。でも、今は、SNS っていうものができて。自分のとこへたどり着いてもらうことっていうのが、容易になりましたよね。良いな、って思ってくれた人が、すぐに広めてくれるし。それがすごい。

木村 そう。こないだ、Twitterで、クラウドファンディングのプロジェクトのやり取りを、セカアカ生としていたら。やっぱり見ていた人たちが反応してくれたりとか。あの後、あの授業が終わってから東京戻ったら、あれを見ていて「 めっちゃ良かった 」って言ってくれた人がいっぱいいたんですよ。あそこではつっこんでこないけど、見てる人がいるっていう。セカアカ2期生の人たちとかが、僕にそういう発言をしてこなかったら、その場って始まっていないんですよね。それってやっぱり「 自分で発信している 」ということだし。

古賀 ですし、それが実は、見ている他の人の役にも勝手に立っちゃっているというか。

木村 そう。あの感覚ってすごくSNS 的っていうか、僕はすごく好きなところですね。

古賀 面白いですよね。で、そういう風な繋がりが、いつの間にかできていく。

木村 そうですね。だから、「 インターネット怖い 」とか、「 SNS 怖い 」とかっていう人もいますけど。それってやっぱり炎上している人を見ているからですよね。でも、百歩譲って、「 炎上してから言えば? 」 って思うんですよね。

古賀 ほとんどの人は炎上していないですもんね。炎上するほど知られてもいないし。

木村 そうです、そうです。そもそもが。


( 後編に続きます ) → → → 後編は、こちらから

※第 3 期生の、受講お申し込み受付けは、終了しました。

photo : ユキヤナギ商會( セカアカ第2期生 ) 文字起こし協力 : ハクジツム( セカアカ第2期生 )